長寿化が進む日本のペット事情において、いま最も深刻な摩擦を生んでいるのがシニア犬のトリミング問題です。10歳や12歳を迎えた途端、これまで通っていたサロンから「万が一の体調急変に対応できないため、新規・継続を問わずお断りします」と告知され、いわゆる“トリミング難民”となる飼い主が急増しています。
この受け入れ拒否の背景には、サロン側の冷淡さではなく、トリミング台からの転落、立ちっぱなしによる関節痛、心臓病の悪化、ヒートショック(ドライヤーや湯温変化によるショック死)といった訴訟リスクの増大があります。民間サロン単独では、施術中の急変に対して蘇生処置を行えない法的な限界があるからです。
この課題をクリアする存在として注目されているのが、シニア犬対応ドッグサロンを標榜する専門特化型や動物病院併設型の施設です。こうした施設では、2人体制で1人が体を支えながら施術を進める「保定技術の徹底」、床に座らせたままカットを行う「負担軽減トリミング」、さらには獣医師が施術前に聴診を行い、途中で休憩を挟む体制が標準化されています。10歳を超えた愛犬に対しては、完璧なデザインカットを求めるのではなく、排泄部位を清潔に保つ「衛生カット(お尻周り・足裏の処理)」へと目的を切り替える飼い主側の柔軟な意識改革が求められます。