出馬を決意した人が直面する現実的な問題が、資金の確保です。まず立候補届出時に法務局へ預け入れる義務があるのが市議会議員供託金です。売名目的や無責任な乱立を防ぐ目的で設けられており、金額は地方自治法の区分によって明確に定められています。
供託金の金額は、政令指定都市の場合は50万円、一般市の場合は30万円です。この資金は、一定以上の得票数を得られれば選挙後に全額返還されます。その基準となるのが供託金没収点です。
市議会議員選挙における供託金没収ラインの計算式は「有効投票総数 ÷ 市議会議員定数 × 10分の1」です。例えば、有効投票総数が4万票、議員定数が20名の市の場合、「40,000 ÷ 20 × 0.1 = 200票」となり、獲得票数が200票を下回ると預けた30万円は自治体に没収されます。一定の支持基盤を固めていれば没収されるケースは稀ですが、完全な泡沫候補となった場合には手痛い損失となります。
次に、実際の市議会議員選挙費用の内訳です。「選挙には数千万円かかる」というイメージは国政選挙や首長選の話であり、一般市の議会議員選挙では実態が大きく異なります。街頭宣伝カーのレンタル代、ポスターの印刷・掲示代、選挙運動用ビラ(証紙ビラ)の作成費用などは、条例に基づき公費負担(公営選挙制度)の対象となります。
公費負担の限度額内であれば自治体から業者へ直接代金が支払われるため、候補者が自己負担する主な費用は以下の項目に限られます。
・選挙事務所の開設・維持費(自宅兼事務所にすれば数万円〜10万円程度に圧縮可能)
・証紙ビラを法定枚数配るための人件費やボランティアへの実費弁償・お茶代
・事前活動(リーフレット印刷、ポスティング費用、政治活動用看板の設置など)
・選挙運動員用の揃いのウインドブレーカーや音響機材の雑費
取材に応じた30代の現職無所属議員の手記によると、「事前活動を含めて用意した自己資金は約120万円。無駄な事務所を借りず、街頭活動とSNSを徹底活用した結果、最終的な実質持ち出しは約85万円で当選を果たした」というリアルな証言もあります。過度な知名度対策を業者に丸投げしない限り、100万〜150万円程度の資金計画で十分に戦うことが可能です。