水辺に佇む姿を一目見ただけでも、基礎知識さえあれば両者を誤認することはありません。最も直感的な識別指標となるのが、すっぽんと亀の見分け方における「甲羅の質感」と「頭部の形状」です。
一般的なイシガメやクサガメ、外来種のアカミミガメ(ミドリガメ)は、骨板の上に硬い角質(ケラチン)の鱗板(甲板)が規則正しく並んだドーム状の甲羅を持ちます。これに対して、すっぽんの甲羅の柔らかさは際立っており、表面に角質板が一切存在しません。骨格部分は著しく軽量化・退化しており、その上を厚いゼラチン質と柔軟な革状の皮膚が覆っています。縁部分は「エンペラ」と呼ばれるヒレ状の柔らかい肉質で、触れると弾力があるのが特徴です。
顔つきの造形も決定的に異なります。スッポンの鼻の形と特徴は、先端が前方に細長く突き出た「ブタ鼻(シュノーケル状)」の管状構造になっています。これは、川底の砂泥に全身を深く潜らせたまま、鼻先だけを水面に出して呼吸(シュノーケリング)するための完璧な潜水適応です。一方、一般的なカメの鼻先は丸みを帯びており、嘴のすぐ上に鼻孔が開口しています。
さらに分類学的な位置づけを整理すると、両者は同じ爬虫綱カメ目に属しながらも科レベルで明確に分岐しています。日本に自生するすっぽんはカメ目スッポン科の分類(学名:Pelodiscus sinensisなど)に位置づけられ、硬い甲羅による「防御力」を捨て、皮膚呼吸の効率化と水中での「遊泳力・瞬発力」を極限まで高めた独自の進化系統を歩んでいます。