かつて旅行先や修学旅行の定番アイテムだった「写ルンです シンプルエース」をはじめとするレンズ付フィルムが、再び空前のブームを巻き起こしている。InstagramやTikTokの投稿を見渡せば、フィルム特有の粒子感や柔らかな光の滲みを活かしたストリートスナップが溢れている。富士フイルムホールディングス株式会社が長年守り続けてきたこのプロダクトは、デジタルネイティブ世代にとって「不便で愛おしい表現ツール」として完全に再定義された。
写真家の奥山由之氏が魅せるノスタルジックでエモーショナルな世界観や、蜷川実花氏が放つ鮮烈な色彩表現に触発された若者たちは、アナログ写真にしかない一期一会のドラマを求めている。写したその場では仕上がりを見られない緊張感と、現像を待つ時間の高揚感。写真映像産業の歴史において、これほど長く愛され、劇的な再評価を果たしたプロダクトも珍しい。