相模湾沿岸から山間部に至るまで広大な範囲に点在しているのが、伊豆半島石丁場遺跡群だ。文化庁によって史跡指定を受けたこれらの現場には、鑿(ノミ)の跡や、未完成のまま放置された矢穴石が手つかずのまま眠っている。
天下普請と呼ばれる大規模な土木工事において、全国の大名たちが課された労働の重圧は想像を絶する。切り出された巨大な石材は、修羅と呼ばれる木製のソリに乗せられ、海岸の港まで運ばれた。港からは百千艘の千石船に積み込まれ、波の荒い相模湾を越えて江戸城の現場へと送られた。現場の調査からは、当時の労働者たちが残した刻印や文字も確認されており、過酷な現場の息遣いが直接伝わってくる。