映画『ちはやふる』シリーズを振り返る読者の多くが抱く最大の疑問、「佐野勇斗は一体どこに出ていたのか?」という問いへの答えは明確です。彼は主人公の綾瀬千早(広瀬すず)たちが高校3年生に進級したタイミングを描いた完結編『ちはやふる -結び-』にて、瑞沢高校かるた部に鳴り物入りで入部してきた1年生、筑波秋博役を務めました。
筑波秋博は、競技かるた界では非常に珍しい「北海道の下の句かるた」経験者という異色のバックボーンを持つキャラクターです。入部当初は競技かるたのルールをろくに理解していないにもかかわらず、「自分は経験者だからA級選手とも渡り合える」と根拠のない自信をみなぎらせ、先輩たちに対してビッグマウスを連発します。何より観客の度肝を抜いたのが、集中した際や感情が高ぶった際に見せる「下唇を突き出す・噛む」という強烈な顔芸でした。
瑞沢高校かるた部の相関図において、彼は恋愛目当てで入部してきた花野菫(優希美青)とともに「トラブルメーカーの新入生コンビ」として機能します。千早や真島太一(野村周平)、西田優征(矢本悠馬)、駒野勉(森永悠希)、大江奏(上白石萌音)という強固な絆で結ばれた先輩たちの中に割り込み、最初は部内の和を乱す存在として描かれます。
しかし、物語が進むにつれて明かされるのは、3人の幼い弟たちを心から慈しみ、「かっこいい兄の背中を見せたい」と人知れず焦燥感を抱える兄としての素顔でした。生意気でコミカルな三枚目でありながら、泥臭く成長していく筑波の人間臭さを、佐野勇斗は瑞々しく、そして圧倒的なエネルギーで表現し切ったのです。