一般家庭における「体調不良=ポカリ」という固定観念は、昭和から平成のテレビCMや日常習慣によって強力に刷り込まれてきました。しかし、SNSや健康相談掲示板を分析すると、その善意のケアが裏目に出た生々しい体験談が数多く報告されています。
ネット上の投稿を検証すると、「夜中に激しい嘔吐が始まり、慌ててポカリを500ml飲ませたら直後に全部吐き戻した」「喉が渇くので冷えたポカリをがぶ飲みしたら、水のような下痢が半日止まらなくなり救急搬送された」といった声が目立ちます。東京都内の小児科クリニックに勤務する現役看護師は、現場の実情を次のように証言します。
「冬場から春先にかけてノロウイルスや感染性胃腸炎が流行する時期、問診で『家で何を飲ませましたか?』と聞くと、8割以上のご家族がポカリスエットと答えます。中には『甘くておいしいから』と子どもが欲しがるまま1リットル近く与えてしまい、腸がパンパンに張ってぐったりした状態で受診されるケースもあります。お母さんやお父さんは子どものために一生懸命看病しているだけに、ポカリが下痢を加速させていた事実を伝えると、非常にショックを受けられます」
このギャップが生じる背景には、健康時の「おいしさ」と病的な脱水時の「吸収効率」の乖離があります。ポカリは日常の水分補給飲料として極めて優秀である一方、病態時の「治療水」ではないという事実を認識しておく必要があります。