年収やランクが関係ないのであれば、なぜ人によって、あるいは時期によって保険証の色が変わるのでしょうか。自治体や健康保険組合の事務局へのヒアリングから判明した決定的な理由は、主に次の2点に集約されます。
第一の理由は、「保険証更新時の誤使用防止と回収確認の効率化」です。特に国民健康保険は原則として1年〜2年ごとに定期更新が行われてきました。その際、新しい保険証を前年と同じ色にしてしまうと、加入者が医療機関の窓口に誤って有効期限切れの古い保険証を提出してしまうトラブルが頻発します。受付窓口で一目で「今年度の有効な保険証であるか」を識別できるよう、自治体は年度ごとに「今年度は若草色、来年度は藤色、その次は薄橙色」といった具合に計画的に色をローテーションさせていたのです。
第二の理由は、「保険者ごとの裁量と独自のデザイン発注」です。公的医療保険の運営主体である「保険者」は、市区町村をはじめ、業種別の国保組合、大企業の組合健保、公務員等の共済組合など、全国に数千団体存在します。カードの材質(紙ラミネートかプラスチックか)やベースカラーの選定は、各保険者の事務局が印刷業者と協議して発注しており、国が一律のカラーコードを指定しているわけではありません。コスト削減のために汎用的な用紙を選ぶ保険者もあれば、視認性(ユニバーサルデザイン)を考慮して目に優しい淡いパステルカラーを選ぶ保険者もあり、その結果として多様な色が存在していたに過ぎません。