皮膚トラブルが起きると「家庭用の強力な軟膏を塗っておけば安心」と、以前処方されたステロイド外用薬や市販のストロングクラス軟膏を安易に塗布する人が少なくありません。しかし、あせもに対してステロイドが効かない原因には、免疫学的かつ微生物学的な明確な根拠が存在します。
ステロイド外用薬は強力な抗炎症作用を持つ反面、局所の免疫防御反応を一時的に抑制する作用を併せ持ちます。純粋な非感染性の紅色汗疹であれば、ごく短期間の塗布で赤みやかゆみを急速に鎮火させることが可能です。しかし、すでに患部に細菌が入り込んで毛嚢炎化している場合や、病原体がマラセチア真菌であった場合、ステロイドの塗布は「病原菌の増殖を後押しするエサ」を与える行為に他なりません。塗った翌日は赤みが引いたように見えても、数日後にはさらに広範囲へ白ニキビ状のぶつぶつが噴き出す悲惨な結果を招きます。
大人のあせもに有効な市販薬の選び方には、段階的なセルフメディケーションのルールがあります。かゆみが激しく炎症が明確な初期段階では、非ステロイド性の抗炎症成分(ウフェナマート、グリチルレチン酸など)やかゆみ止め成分(ジフェンヒドラミン、クロタミトン)、組織修復を促すアラントイン配合の外用薬が第一選択です。ジュクジュクした浸出液がある場合は、患部を保護して乾燥を促す酸化亜鉛製剤が適しています。
市販のステロイド剤(ウィーク〜ミディアムランク)を使用する際は、「強いかゆみと赤みがある部位に限定し、最長でも5日以内に留める」という厳格な自己ルールを守らなければなりません。塗布後3〜4日経過しても改善しない、あるいは白い芯のような膿が見え始めた段階で、自己判断による塗布は即刻中止すべきです。