では、そもそも「花一匁」とは何を指す言葉なのでしょうか。その由来と歴史を紐解くと、当時の商習慣や花街、風流な市場風景が見えてきます。
「匁(もんめ)」は尺貫法における質量の単位(1匁=約3.75g)であり、江戸時代には銀貨の通貨単位としても機能していました。つまり「花一匁」とは、「一匁の価値がある花」または「銀一匁で買える美しい花」を意味します。
江戸期の風俗史料を紐解くと、以下の2つの有力な説が浮かび上がります。
- 生花・薬草の買い付け市場説:市場で商人たちが「一匁まけて」「いや負けられない」と価格交渉を競り合っていた情景を、子どもたちが見立て遊びとして模倣したとする説。
- 花街・遊里の符牒(ふちょう)見立て説:遊女を「花」に見立て、その揚げ代や花代のやり取りを歌った大人の俗謡が、次第に子どもたちの遊戯歌へ転化したとする説。
どちらの説においても共通しているのは、残酷な生贄や身売りではなく、「価値あるものを巡る駆け引き」や「商売のやり取り」が遊びのモチーフになっている点です。子どもは大人の世界(市場や商取引)を真似て遊ぶ習性があり、それがわらべうたの起源として定着したと考えるのが自然な学術的帰結です。