肺高血圧症の中でも、血栓が肺動脈に詰まることで発症する慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)において、日本の医療チームが世界に示したプレゼンスは圧倒的だ。外科的に血栓を取り除く「肺動脈血栓内膜摘除術(PEA)」が困難な末梢型の病変に対し、カテーテルを用いて血管を押し広げる「経皮的肺動脈形成術(BPA)」の技術水準は、世界中から医師が見学に訪れるほどの高みに達している。
ミリ単位以下の繊細な手技によって、詰まった血管を一つずつ再開通させていくBPAは、侵襲性が低く高齢患者にも適用しやすい。近年では画像診断技術の3次元化とカテーテル素材の進化が融合し、治療に伴う肺水腫や血管損傷のリスクが劇的に低下した。外科手術とBPA、そして最新の薬物治療を緻密に組み合わせる集学的治療によって、CTEPHは「治癒を目指せる疾患」へと変貌を遂げた。