2021年10月期ドラマをめぐる言説の中には、当時の視聴形態の変化を正しく捉えられていない誤解や思い込みが散見されます。業界の実態取材から判明している決定的な盲点は以下の2点です。
誤解1:「世帯視聴率が1桁=失敗作」という時代遅れの物差し
ネット上の掲示板等で当時よく見られたのが、「『最愛』は視聴率8%台だから爆死」という短絡的な評価です。しかしこれは、完全な認識の誤りです。
テレビ局の編成戦略における最重要指標は、2020年以降「コア視聴率(購買意欲の高い若年・ファミリー層の視聴実態)」と「見逃し配信の再生数」へと舵を切っていました。『最愛』はコア層からの圧倒的な支持を得ており、TVerでの広告単価や関連グッズ、後の海外番販・二次利用収益において、同クールのどの高視聴率ドラマよりも巨大な経済効果を叩き出していたのです。
誤解2:オリジナル脚本は原作モノに勝てないという固定観念
当時、「日本のドラマは漫画や小説の原作頼みでオリジナルが育たない」という言説が定着しつつありました。しかし、2021年秋の覇者となった『最愛』は、奥寺佐渡子と清水友佳子による完全オリジナル脚本です。プロデューサーの新井順子、演出の塚原あゆ子という『アンナチュラル』『MIU404』を生み出した黄金タッグが、綿密な取材と伏線設計によって生み出した完全オリジナルストーリーが、名だたる原作モノを凌駕する熱狂を生み出した事実は、クリエイター陣に大きな希望を与えました。