感情論による叩きが加熱する一方で、飲食業界のプロの間では「水代の請求自体は至極真っ当な商慣習である」という冷静な指摘もなされていました。実際に店舗で提供されていたのは水道水ではなく、イタリア・トスカーナ地方の銘水として名高いアクアパナ(Acqua Panna)や、微発泡ミネラルウォーターのサンペレグリノといった高品質な瓶入りウォーターでした。
ヨーロッパのファインダイニングや伝統的なリストランテにおいて、客が着席した際に「ガス入り(フリザンテ)か、ガスなし(ナチュラーレ)か」を尋ねられ、有料のボトルウォーターを注文するのは当然のエチケットとされています。日本のように「席に着けば冷たいお冷が無料で提供される」という文化は、国際的な高級レストランの基準から見ればむしろ特異なサービスです。
しかし、タツヤ・カワゴエの現場オペレーションには重大な盲点がありました。客に対して「有料のミネラルウォーターを提供してよいか」という意思確認を行わず、あたかも無料のお冷であるかのように注いだケースがあった点です。どれほど上質なアクアパナであっても、事前の説明なしに事後請求されれば、日本の外食慣習に親しんだ一般客が「不当な追加請求」と感じるのは無理もありませんでした。高級店のルールと大衆の常識の間にある溝を埋める接客努力を怠ったことが、騒動を泥沼化させた構造的要因といえます。