吉野家が深夜料金に踏み切った背景には、単なる原材料価格の変動にとどまらない、日本の外食産業が抱える構造的な人手不足と人件費の上昇があります。
労働基準法第37条により、午後10時から午前5時までの深夜労働に対しては、通常の賃金の25%以上の割増賃金を支払う義務があります。近年の最低賃金引き上げの流れに伴い、都市部を中心に深夜帯のアルバイト時給は1,500円〜1,700円規模に達することも珍しくありません。
かつてのように「ワンオペレーション(1人勤務)」で人件費を極限まで削る運営手法は、防犯面や労働環境の観点から社会的に許容されなくなりました。吉野家をはじめとする外食企業は、複数名体制の維持や防犯セキュリティの強化、空調や厨房機器の深夜稼働に伴う光熱費の負担など、深夜営業を維持するだけで莫大な固定費を背負うことになります。
選択肢は「深夜営業をやめて夜間閉店するか」「深夜料金を導入して営業を継続するか」の二者択一でした。吉野家は後者を選び、深夜に温かい食事を必要とするエッセンシャルワーカーや夜勤従事者のために灯りを守る道を選択しました。深夜料金7%という設定は、利便性を提供し続けるための「深夜営業維持コストの適正な受益者負担」という側面を持っています。