『特攻の拓』の作中において「悪魔の鉄槌」と称されるルシファーズハンマーのベースとなった実在の車種は、ヤマハが誇る名車「SR400(またはSR500)」です。クラシカルな空冷単気筒エンジンを搭載したストリートモデルであり、本来はゆったりとした鼓動感を楽しむ街乗りバイクの代名詞でした。しかし、作中のルシファーズハンマーは、その素朴な車体に狂気のチューニングを施すことで、マルチ(4気筒)エンジンの暴走族マシンを直線で置き去りにする異形のモンスターへと変貌を遂げています。
一方で、モータースポーツ史やバイクの歴史に詳しいファンが注目するのが、その名称の「元ネタ」です。実は「ルシファーズハンマー(Lucifer's Hammer)」というマシンは、アメリカのレース界に実在した伝説のハーレーダビッドソンに実在の起源を持ちます。1980年代のAMA「バトル・オブ・ザ・ツインズ(BOTT)」において、名チューナーのドン・ティリーがハーレーのXR1000用空冷Vツインエンジンをベースに製作したワークス撃破用プライベーターレーサーこそが、本家「ルシファーズハンマー」でした。
当時のドゥカティなど軽量な欧州勢を相手に、巨大なアメリカンVツインのトルクを叩きつけてねじ伏せたその姿は、まさに大地を砕く「悪魔の鉄槌」。原作を手掛けた佐木飛朗斗氏が、このアメリカンレーサーの過激な闘魂と語感を、日本のビッグシングルカスタムであるSRへと巧みに憑依させたことこそが、唯一無二の存在感を生み出した最大の背景です。