ニキビが治った後に肌に残る痕跡には、大きく分けて「赤み」と「茶色いシミ」の2種類が存在します。この2つを混同したままケアを続けることこそ、ニキビ跡の色素沈着が消えない最大の理由です。
専門用語で赤みはPIE(炎症後紅斑)、茶色い跡はPIH(炎症後色素沈着)と呼ばれます。見分け方は極めてシンプルです。透明なガラス板や清潔な指先で跡を軽く圧迫してみてください。赤みが一時的に白く引く場合は、皮膚深層の毛細血管が拡張・増生しているPIEです。一方で、圧迫しても色が消えず茶色や黒褐色にとどまる場合、それは表皮から真皮浅層にかけてメラニン色素が過剰沈着したPIH、すなわち本稿がターゲットとする色素沈着です。
ニキビの炎症が起きると、肌内部では活性酸素が大量発生し、防御反応としてメラノサイト(色素細胞)が活性化します。通常であれば、生成されたメラニンは肌の角化プロセス、いわゆるターンオーバーの期間を経て垢とともに体外へ自然排出されます。健常な20代のターンオーバー周期は約28日とされていますが、度重なる炎症や乾燥、加齢によってサイクルは容易に乱れます。30代〜40代では排出に45日〜60日以上を要することも珍しくありません。
さらに、強い炎症によって表皮と真皮の境界にある基底膜が損傷すると、メラニンが真皮へと滴下して居座ってしまいます。これが「半年経っても1年経っても消えない」頑固な茶色跡の正体です。この状態の肌に対して刺激の強い誤ったセルフケアを重ねると、メラノサイトが再び刺激され、色素沈着をさらに深層へと固定化させる悪循環に陥ります。