「映像化不可能な小説」と長年評されてきた本作を映画化した2015年の堤幸彦監督版は、原作とは異なるアプローチで見事なエンターテインメントへと昇華させました。
映画版のキャッチコピーは「最後の5分、全てが覆る。あなたは必ず2回観る。」。小説が「活字による先入観(読者の思い込み)」を利用したのに対し、映画は「カメラアングルと編集の魔術」を用いて観客を欺きました。
Side-Aの夕樹を演じたのは森田甘路、Side-Bの辰也を演じたのは松田翔太、そしてマユ役は元AKB48の前田敦子です。映画前半では、森田甘路演じる小太りな夕樹が過酷なランニングをし、曲がり角を曲がった瞬間に松田翔太の姿へと切り替わります。観客はこの演出を見て、「夕樹が努力して痩せ、松田翔太のようなイケメンに変身した」と完全に錯覚させられます。
しかし、「最後の5分」で映画独自の種明かしシークエンスがスタートします。映画の結末では、ホテルのロビーで2人の鈴木が鉢合わせした瞬間、松田翔太(辰也)が状況を飲み込めず呆然とする中、松田翔太が森田甘路(夕樹)に殴りかかり、逆に夕樹から強烈なカウンターパンチを浴びせられて鼻血を出して昏倒するという、痛快かつ滑稽なドタバタ劇として映像化されました。
さらに映画版のエンドロールでは、前田敦子演じるマユが辰也と夕樹の電話を同時に受けて部屋を行き来する姿や、クリスマスの待ち合わせ時間を巧みにずらす現場検証のような舞台裏が明かされ、小説とは一味違うブラックコメディとしてのカタルシスを提供しました。