ピカールの研磨力は強力である一方、表面処理が施されたデリケートな素材に使うと修復不可能なダメージを与えてしまいます。現場で最も多発している失敗事例と、決して使ってはならない代表的な対象を整理しました。
もっとも警戒すべきなのがメッキ加工製品における皮膜の剥がれです。一般的な装飾用クロムメッキや金メッキの膜厚は、わずか0.1〜0.5マイクロメートル程度と非常に薄い構造になっています。ここに3〜4ミクロンの研磨粒子を含むピカールを塗り込んで擦ると、あっという間にメッキ層が削り落とされ、下地のニッケルや銅、あるいは樹脂素材がまだらに露出してしまいます。一度剥がれたメッキは再メッキ加工業者に依頼しない限り元に戻りません。
また、以下のような素材もピカールの使用に適していません。
- アルマイト加工(陽極酸化被膜)されたアルミ製品:表面の保護皮膜が削れて白ボケや腐食の原因になります。
- ヘアライン加工・サテン仕上げ・つや消し加工の金属:微細なスジ模様が削れて消え、不自然な光沢ムラが発生します。
- 純金・プラチナ・高級シルバーなどの貴金属・ジュエリー:摩耗による重量減少(目減り)や刻印の消失を招くため、専用の貴金属磨きクロスを使用すべきです。
- 塗装面およびクリアコーティング面:車のボディ塗装などに使うとクリア層が激しく擦り減り、白濁や傷の原因になります。
- 光学ガラス・メガネレンズ・ミラー(鏡面ガラス):ガラスに対しては研磨材の硬度が適しておらず、傷の原因となります。