サバの煮付けがパサつく最大の要因は、魚の筋原線維タンパク質(ミオシン・アクチン)の急激な熱凝固にあります。魚肉は60℃〜70℃を超えるとタンパク質が急激に収縮し、内部の水分と脂質を外へ絞り出してしまいます。冷たい煮汁に魚を入れて火にかけたり、グラグラと強火で15分以上煮続けたりすると、繊維が締まりきってスポンジのように水分が抜けた状態に陥ります。
また、サバ特有の生臭さの主成分は「トリメチルアミン」と脂質の酸化物です。これらを完全に除去するためには、調理前の適切な下処理が欠かせません。サバの煮付けにおける臭み取りと下処理の手順は、以下の3ステップを忠実に守ることが重要です。
第一に、切り身の皮目に十字または一文字の飾り包丁を浅く入れます。これにより皮の破れを防ぎ、熱と味の通りを均一にします。第二に、身全体に軽く塩を振って約10分〜15分放置し、浸透圧で臭みを含んだドリップを浮き出させます。第三に、80℃〜90℃前後の熱湯を回しかける「霜降り」を行い、表面の白濁した脂と血合いを流水で優しく洗い流します。熱湯を直接かけすぎると皮がめくれるため、ボウルに張った湯をくぐらせる方法も効果的です。最後にキッチンペーパーで水分を徹底的に拭き取ることが、仕上がりの透明感を左右します。