情報が溢れるインターネット上には、糖尿病患者にとって極めて危険な民間療法や誤った思い込みが散見されます。重篤な感染症を招く前に、以下の3つの誤解を正しく認識する必要があります。
第一の誤解は、「巻き爪の痛みや圧迫感は、角を深く切り落とせば解消する」という危険な常識です。爪の角を斜めに切り落とすいわゆる深爪を行うと、一時的に圧迫が取れたように感じられますが、爪が伸びる過程で皮膚の柔らかい組織に爪の棘(とげ)が突き刺さります。これが糖尿病における巻き爪の危険性を劇的に跳ね上げる要因です。皮膚を突き破った爪の破片から常在菌が侵入し、蜂窩織炎(ほうかしきえん)を引き起こして足全体が赤く腫れ上がる事故が後を絶ちません。
第二の誤解は、「市販の水虫薬をドラッグストアで買って塗れば爪白癬は治る」という過信です。一般的な市販の水虫用外用薬は、皮膚の角質層には浸透しますが、硬く分厚くなった爪の深部にはほとんど届きません。糖尿病に伴う爪白癬の治療法としては、医療機関で皮膚科専門医の確定診断(顕微鏡検査等)を受けた上で、エフィナコナゾールなどの爪専用外用液や、ホスラブコナゾールをはじめとする抗真菌薬の内服療法を選択するのが標準的です。市販薬を塗りながら効果が出ないまま放置している間に、白癬菌が足底全体に広がり、皮膚の亀裂から二次感染を招くリスクが高まります。
第三の誤解は、「器具を使って自分で爪を薄く削り落とす」という行為です。ネット通販等で手に入る電動爪やすりやグラインダーを使用し、目視が不十分なまま皮膚まで削り取って出血させる事例が多発しています。糖尿病患者の爪の切り傷による感染は、微小な点状出血であっても健常者の大怪我と同等の脅威となります。