一部のネットコミュニティやSNSでは、ビルダーの急逝に対して「アナボリック・ステロイド(筋肉増強剤)の乱用が原因ではないか」という憶測が流れることがあります。しかし、当時北村さんを診察した医師団の診断や関係者の証言によると、心臓肥大などの典型的な薬物乱用症状ではなく、純粋な飢餓状態と電解質不全による心不全であったことが確認されています。
その壮絶さを物語るのが、実妹である北村善美さんが自著や手記で語った臨終直前のエピソードです。
亡くなる直前、一度目の救急搬送から帰宅した際、意識が朦朧とするなかで北村さんは妹に向かってこう尋ねたといいます。
「善美、ボクの心臓はまだちゃんと動いているかい?」
自らの生命が危険水域にあることを本能で悟りながらも、北村さんは救急隊員から渡された糖分を含む飴玉や点滴すら「大会の仕上がり(筋肉のカット)が崩れてしまう」と拒絶しようとしました。周囲が泣きながら懇願しても、「応援してくれるファンのために最高の身体を見せたい」という純粋な責任感から妥協を拒んだのです。