ナスカの地上絵の研究において、現在世界で最も注目を集めているのが日本の山形大学ナスカ研究所です。坂井正人教授らの研究チームは、現地での徹底的なフィールドワークに加え、日本IBMとの共同研究によるディープラーニングAIを活用し、かつてないスピードでナスカの地上絵新発見を成し遂げています。
過酷なナスカ台地は広大であり、風化によって微かにしか残っていない地上絵を人間の目視だけで探し出すことには限界がありました。研究チームは高解像度の航空写真やドローン映像、LiDAR(レーザー測量)データをAIに学習させ、地上絵の候補地を自動スクリーニングするシステムを構築。その結果、調査開始からの短期間で数百点もの未知の地上絵が特定され、その成果は国際的な科学雑誌に掲載されるなど世界的な大ニュースとなりました。
2020年代半ばから最新の研究で判明した重要な事実は、新たに発見された地上絵の多くが、かつて考えられていたような「神々が住む天空に向けたメッセージ」ではなく、「地上を行き交う人間のための視覚情報」であったという点です。発見された小型の地上絵は、集落と儀礼の中心地を結ぶトレイル(小道)沿いに集中的に配置されていました。そこには、リャマなどの家畜を連れた隊商の無事を祈る絵だけでなく、儀礼で首を切り落とす場面を記したレリーフのような図像も含まれており、当時の人々にとって死生観や掟を再確認させるための「警告板」や「聖域の境界標」として機能していたことが浮き彫りになっています。