なぜベジータの母は描かれなかったのか。その背景には、原作者の鳥山明氏が明確に構築していた「戦闘民族サイヤ人の生態と文化」が深く関係しています。
鳥山氏は過去の公式インタビュー(雑誌『最強ジャンプ』2014年3月号の特別企画など)において、サイヤ人の家族関係について衝撃的な設定を明かしています。鳥山氏の解説によると、サイヤ人という種族は本来、個人主義かつ好戦的であり、地球人のような「夫婦の絆」や「家族の情愛」という概念が極めて希薄でした。
一部の特異な例を除き、サイヤ人にとっての配偶者とは「繁殖期に優秀な子孫を残すための一時的な相手」に過ぎず、子どもが生まれた後もすぐにカプセル型の保育器に入れられ、潜在戦闘力が高ければそのまま戦士として育成、低ければ辺境惑星へ飛ばされるシステムが敷かれていました。
この設定に基づけば、ベジータ王の妻(王妃)もまた、地球の歴史に見られるような「終身の王妃」や「国母」として宮殿に君臨していたわけではなく、「ベジータ王に見合う極めて高い戦闘力を持った上級戦士の女性」として選別され、出産後は一戦士に戻ったか、あるいは早々に戦死していた可能性が高いと考えられます。