「片耳イヤホンで走っていただけなのに、なぜ警察に注意されたのか」という疑問を持つドライバーは少なくありません。警視庁や各道府県警察の交通指導取締り現場における運用実態を取材すると、現場の警察官が適用している具体的な判断ルーティンが浮かび上がってきます。
現場における取り締まりや指導警告は、主に次の3つのステップで実施されています。
第一に、「外観上の確認と声かけへの反応」です。パトカーや白バイ、あるいは交差点に立つ警察官が自転車に向けて「そこの自転車、止まりなさい」と通常音量で指示を出した際、即座に反応して減速・停止できるかが最初の関門となります。呼びかけに気づかず通り過ぎようとした場合、その時点で「安全な運転に必要な音が聞こえていない」客観的証拠と判断されます。
第二に、「音量および装着状態の確認」です。自転車を停止させた後、警察官は運転手からイヤホンを外させず、装着したままの状態で質問を投げかけます。その受け答えがスムーズに成立するか、あるいはイヤホンから周囲へ音が漏れ出していないかを確認します。
第三に、「製品の遮音性能のチェック」です。近年普及しているアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホンは、片耳のみの装着であっても、その片側の耳からの環境音を極端に低減させます。人間の脳は片耳からの音響情報が遮断されるだけで、音の発生源を特定する「音源定位能力」が著しく低下するため、警察官は「危険な運転状態」と判断して指導警告票の交付や是正指導を行うのが通例です。