「サマーウォーズのスパコンは氷で本当に冷やせるのか?」という長年の疑問に対し、熱力学の観点から結論を述べると、「極めて短時間の気休めにはなるが、数十分から数時間で破綻する」というのが工学的な解答になります。
氷が個体から液体へ変化する際に周囲から奪うエネルギー(融解熱)は、1kgあたり約334kJ(キロジュール)です。もし劇中に登場したスパコンの消費電力が10kW(=毎秒10kJの熱を放出)だと仮定した場合、この発熱量を相殺し続けるためには、理論上1分間に約1.8kg、1時間で100kgを超える氷が完全に融解しなければ計算が合いません。
さらに深刻なのが熱移動の効率です。スパコンの心臓部であるCPUやベクトル演算プロセッサはヒートシンク(放熱器)と直結した強制排気ファンによって冷やされます。単にサーバーラックの周囲へ氷ブロックを並べただけでは、冷気は床面付近に停滞し、ラック上部の吸気口まで十分に循環しません。吸気温度を10度下げられたとしても、密閉された和室全体の室温が熱暴走限界を超えるのは時間の問題でした。
そして最大の物理的トラップが「結露による回路ショート」です。ネット上でも「サマーウォーズ スパコン 結露」として最も多く指摘されるポイントですが、冷たい氷の塊を高温多湿な日本の夏の座敷に放置すれば、氷の表面から大量の水蒸気が立ち上ります。吸気ファンがこの湿潤な冷気を内部に吸い込めば、稼働中の高温チップ自体には結露しにくいものの、電源基板の配線や冷え切った金属フレーム、端子周辺に結露水が発生し、高電圧による絶縁破壊や一発ショートを引き起こします。