電気には「単相」と「三相」という2つの異なる供給方式が存在します。同じ200Vでありながら両者が完全に区別されている理由は、電気が流れる「波(交流の位相)」の数と配線構造の違いにあります。
一般家庭に広く普及しているのは単相3線式配線です。電柱から「赤・白・黒」の3本の電線が引き込まれており、中央の中性線(白)と両端(赤または黒)のいずれか1本を使うと100Vが得られます。そして、両端の2本(赤と黒)を直接組み合わせることで単相200Vを取り出します。単相の電気は1組の波が一定の周期で往復するシンプルな構造をしており、電熱機器や小〜中規模のモーターを静かに安定駆動させる用途に適しています。現在、一般家庭の家庭用IHクッキングヒーター電圧(200V/約4kW〜5.8kW)や、20畳超のリビング用大型ルームエアコンにはこの単相200Vが標準採用されています。
これに対し、工場や商業施設で使われるのが三相3線式配線(三相200V)です。3本の電線に、それぞれ位相が「120度ずつズレた」3つの交流の波が流れています。この120度ズレた波が互いに重なり合うことで、電気の力だけで自然な「回転磁界」を生み出せるのが最大の特徴です。物理的にモーターを強力かつ滑らかに回転させることができるため、業務用の大型コンプレッサー、クレーン、工作機械、業務用パッケージエアコンなどを最小限のエネルギー損失で駆動できます。
直感的に例えるなら、単相は「1人の漕ぎ手がペダルを踏み込む自転車」、三相は「120度ずつタイミングをずらして3人が常にクランクを回し続けるペダル」と言えます。後者は常に一定の回転力が途切れることなく加わり続けるため、重い負荷がかかってもエネルギー効率が落ちません。しかし、この波形の違いこそが互換性を阻む壁であり、単相200Vの回路に三相200Vの機械を無理やり繋いでも、回転磁界が発生しないためモーターは1ミリも回転せず、内部コイルに過大電流が流れて一瞬で焼き切れてしまいます。