火雷神の正しい読み方は「ほのいかづちのかみ」です。「火(ほ)」は燃える炎を指し、「いかづち(厳つ霊)」は猛々しく恐ろしい霊力を意味します。その由来は最古の歴史書『古事記』の黄泉の国下り(よみのくにくだり)の場面に克明に記されています。
亡き妻である伊邪那美命(イザナミ)を連れ戻すため、夫の伊邪那岐命(イザナギ)は死者の国である黄泉の国へと向かいました。しかし、変わり果てた妻の姿を決して見てはならないという禁忌を破り、灯りを灯してしまいます。そこでイザナギが目撃したのは、腐敗し蛆が湧くイザナミの遺体と、その身体各所に発生した八柱の雷神「八雷神(やくいかづちのかみ)」の恐ろしい姿でした。
このとき、イザナミの胸に宿っていた神こそが「火雷神」です。頭に生じた大雷神(おおいかづちのかみ)に次ぐ重要な位置に顕現し、火の激しさと雷の爆発的なエネルギーを体現する存在として誕生しました。イザナギを追撃する黄泉軍(よもつしこめ)とともに迫り来る八雷神の描写は、古代日本の神話の中でも随一の迫力を誇る場面として語り継がれています。