趣里の芝居を特徴づける最大の武器は、全身から放たれる異様なまでの身体性だ。台詞を発する前の一呼吸、指先の微かな震え、重心の不気味な揺らぎ。観客の視線を瞬時に奪うその動きのルーツは、4歳から打ち込んできたクラシックバレエにある。
将来を嘱望され、15歳で単身イギリスのアーツ・エデュケーショナル・スクールへ留学。だが、残酷な運命は唐突に訪れた。アキレス腱断裂と足首の剥離骨折。医師から告げられたのは「プロのバレリーナとしての復帰は不可能」というあまりに重い宣告だった。
人生のすべてだった夢を奪われ、失意の底で帰国した彼女を救ったのが演劇だった。身体表現という共通項を持ちながら、不完全さや人間の歪みそのものを肯定できる芝居の世界。足首の痛みを抱えながら舞台に立つ彼女は、バレエという規律の美学を、むき出しの感情を伝えるための「肉体言語」へと昇華させていったのである。