音楽的な立ち位置に目を向けると、ベースとギターの役割の違いはより鮮明になります。アンサンブルという共同作業において、両者は完全に異なる責任を背負っています。
エレキギターの本領は、ギターのコード弾きとメロディに象徴される「楽曲の装飾・物語性の提示」です。ボーカルの背後でジャカジャカと和音をかき鳴らして曲のコード感を決定づけたり、イントロの印象的なリフや間奏の泣きのギターソロでリスナーの感情をダイレクトに揺さぶったりします。スポットライトを浴び、ステージの最前線で楽曲の表情を自在に彩る「花形」としての立ち位置です。
対照的に、楽曲の心臓部を司るのがバンド演奏におけるリズム隊の重要性です。ベースはドラムと並んで「リズム隊」と呼ばれ、ドラムのバスドラム(キック)と密接にリンクしながら、拍の重心を定めます。同時に、楽曲の和声(ハーモニー)の最低音である「ルート音(根音)」を供給するため、リズムとコードの両方を一手に支える唯一無二の架け橋となります。リハーサルスタジオやライブハウスでベースの音が抜けた瞬間、バンドサウンドは骨組みを失ったテントのように頼りなく崩れてしまいます。表立って目立たずとも、フロア全体の身体を揺らし、グルーヴ(ノリ)を支配しているのは間違いなくベースです。