物語のクライマックス、全ての記憶と妄想の辻褄が合致したミチオは、彼を精神的に追い詰め続けた元凶である母親・早苗と直接対決します。しかし、そこに待っているのはカタルシスのある救済劇ではありません。
ミチオは狂気の果てに実の母親を手にかけ、その命を奪います。そして訪れるラストシーンで、ミチオの前に現れたのは新たな「虫」でした。母親の死体を見下ろしながら、ミチオはその虫を「お母さん」だと認識し、穏やかな表情で語りかけます。
タイトルの『向日葵の咲かない夏』が示唆する通り、向日葵が太陽に向かって真っ直ぐ咲き誇るような輝かしい少年時代は、ミチオの世界には最初から存在しませんでした。主人公が完全に狂気の中へと融解し、二度と正常な人間社会へ戻れないことを決定づけるこのラストは、日本ミステリー史に残る戦慄のエンドロールです。