宮島を訪れる年間数百万人規模のインバウンド需要は、隣接する廿日市市全体に経済的な恩恵をもたらしてきた。一方で、観光地特有の喧騒と日々の生活空間をどう切り分けるかは、長年このエリアが抱えてきた隠れた課題でもあった。
宮内串戸エリアは、その絶妙な「防波堤」として機能している。観光客の多くが快速列車で宮島口や広島駅へと直行する中、この駅で降り立つのはほぼ100%が地元住民や近隣へ通う人々だ。観光地プライスから守られた昔ながらの生鮮食品店や日常使いのスーパーが並び、観光都市の華やかさをすぐ隣で享受しながらも、地に足の着いた暮らしの静寂が保たれている。この落ち着きこそが、混迷する観光過密の時代において最大の強みとして再評価されている。