花咲徳栄高校を語る上で欠かせないのが、2017年夏の第99回全国高校野球選手権大会における埼玉県勢初となる甲子園優勝歴です。激戦区・埼玉を幾度も制し、高橋昂也投手、西川愛也選手、清水達也投手、野村佑希選手、井上朋也選手といったプロ野球界の第一線で活躍するタレントを途切れることなく輩出しています。
名将・岩井隆監督の指導法は、かつての高校野球界に蔓延していた不条理な長時間練習や精神論とは一線を画しています。岩井監督が重視するのは「インビジブル・スキル(数値化しにくい洞察力や状況判断力)」と「科学的肉体改造」の融合です。専用グラウンドには最新の弾道測定器や動作解析ツールが導入され、個々のスイング軌道や球質が可視化されています。
取材に応じたチームOBは、恩師の指導風景を次のように述懐しています。
「監督から『気合を出せ』と怒鳴られた記憶はありません。代わりに突きつけられたのは『なぜそのカウントでその球種を待ったのか』という理詰めの問いでした。食事に関しても、体重と除脂肪体重の数値を毎日測定し、摂取カロリーと栄養素の配合をトレーナーと管理する。高校生でありながら、実質的にはプロ球団の育成組織にいるような密度でした」
岩井野球の根底にあるのは「生活の乱れはプレーの乱れに直結する」という哲学です。道具の整理整頓、挨拶の徹底、教室内での授業態度はグラウンドでのパフォーマンスと同等に評価されます。グラウンド上の技術だけでなく、社会に出て通用する人間性を育むアプローチこそが、高卒でプロ入りした選手たちがプロの過酷な競争環境でも息長く活躍できる真因と言えます。