政治社会学および権力心理学の観点から岸信介を分析すると、彼が体現していたのは「目的至上主義型テクノクラート(技術官僚)」の究極形でした。
エリート意識が生んだ「国民との心理的断絶」
岸の行動規範の根底には、「大衆は感情で動くが、国家百年の計を見通せるのは選ばれたエリートのみである」という強烈な父権主義(パターナリズム)が存在していました。安保闘争で見せた「声なき声」発言は、国民の民主的抗議を「無知な大衆の一時的な熱狂」として切り捨てる官僚的エリート意識の表れです。
目的のためには暴力団関係者や右翼フィクサー、果ては海外発祥の特異な宗教団体すらも道具として割り切って利用するマキャベリズム。このプラグマティズムが戦後の防衛体制や経済復興の推進力となった反面、民主主義的な対話や説明責任を蔑ろにする「政治不信の原罪」を日本社会に植え付けました。
【プロの結論】昭和の政治遺産を現代日本人がどう総括すべきかの判断基準
現代を生きる私たちが岸信介という人物を評価する際、極端な二項対立に陥ることは最も戒めるべき罠です。