内視鏡クリニックの予約時、スタッフから「当日は絶対に自分で車を運転して来ないでください」と念を押されます。「少し休んで頭がスッキリしていれば平気だろう」と軽く考える受診者が後を絶ちませんが、これは極めて危険な誤認です。医学界が運転を終日禁止する背景には、人間の認知機能を麻痺させる「ハングオーバー効果(持ち越し効果)」が存在します。
自覚症状として「完全に目が覚めた」と感じていても、脳波測定や反射神経テストを行うと、鎮静剤投与後6〜8時間が経過しても突発的な危険回避能力や空間認識能力は通常時の40〜60%程度まで低下していることが各種実験で証明されています。これは、呼気中アルコール濃度が基準値を超えている状態(酒気帯び運転)とほぼ同等の運動機能障害です。
さらに見過ごせないのが法的な責任です。道路交通法第66条(過労運転等の禁止)では、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転することを固く禁じています。鎮静剤の影響下で物損事故や人身事故を起こした場合、「医療機関から運転停止の指示を受けていたにもかかわらず運転した」とみなされ、危険運転致死傷罪の適用や任意保険の保険金不払いにつながる致命的なリスクを背負うことになります。自転車や電動キックボードの運転も同様に対象となるため、当日は電車・バス・タクシーを利用するか、家族の送迎を確保しなければなりません。