「手軽で便利なペットボトル加湿器だが、カビや雑菌が繁殖して危険という噂は本当なのか」——結論から申し上げれば、その懸念は単なる都市伝説ではなく、構造上の明確な医学的事実に基づいています。
現在市販されているペットボトル加湿器の大半は、超音波の振動によって水を微細な粒子(エアロゾル)に変えて空気中に放出する「超音波式」を採用しています。ヒーターで水を沸騰させるスチーム式(加熱式)と異なり、超音波式は水を一切加熱しません。つまり、水タンクや給水経路の中で雑菌やカビが繁殖していた場合、それらを何一つ殺菌することなく、生きたまま部屋中に噴霧してしまうという決定的な弱点を抱えています。
日本呼吸器学会などの臨床現場でも度々警鐘が鳴らされているのが、いわゆる「加湿器肺(過敏性肺炎)」です。超音波によって生成される水滴の大きさはおよそ1〜5マイクロメートル程度。このサイズは、細菌や真菌(アスペルギルスやクラドスポリウムなど)、およびそれらの死骸から出るエンドトキシン(内毒素)を付着させたまま、人間の気管支をすり抜けて肺胞の最深部にまで到達するのに十分な細かさです。その結果、急性の咳や発熱、呼吸困難を招き、最悪の場合は入院加療を余儀なくされるケースも報告されています。
さらに見落とされがちなのが「使用する水の種類」です。「体に良さそうだから」とミネラルウォーターや浄水器の水を入れてしまうユーザーが後を絶ちませんが、これは極めて危険な行為です。日本の水道水には殺菌を目的とした残留塩素が含まれており、一定時間菌の増殖を抑える効果があります。しかし、塩素が除去されたミネラルウォーターをペットボトルに注ぎ、暖房の効いた室内に数時間放置すれば、内部はまさに細菌にとっての理想的な培養基と化します。手軽さの代償として、目に見えない病原体を自ら吸い込むリスクを背負っていることを忘れてはなりません。