1983年に公開された蔵原惟繕監督、高倉健・渡瀬恒彦主演の映画『南極物語』は、観客動員数850万人、配給収入約59億円という当時の日本映画歴代最高記録を樹立しました。しかし、映画におけるドラマティックな展開と、実際の歴史的事実にはいくつかの相違点が存在します。
映画では、犬たちがシャチに襲われたり、氷の裂け目に落ちたり、オーロラが輝く夜空の下で力尽きていく様子が克明に描かれました。しかし実際には、首輪を抜いて基地から姿を消した犬たちの最期を目撃した人間は一人もおらず、それらの劇的な死のシーンは映画的な脚色です。
また、映画の中で隊員たちが激しい後悔から日本全国を巡って犬たちの飼い主へ謝罪行脚を行う描写がありますが、実際には隊員たちは猛烈なバッシングに晒されながらも、次なる南極観測の再開と犬たちの安否確認に向けて全力を尽くしていました。フィクションとしての感動的な味付けはあるものの、「命を見捨てざるを得なかった人間の業と苦悩」を描ききった点において、映画は実話の核心を強く伝えています。