日本国内で流通している醤油は、日本農林規格(JAS)によって5つの主要な種類に分類されている。家庭で広く使われる薄口・濃口に加え、愛知県を中心に発展した「白醤油」や中部地方特有の「たまり醤油」も含めて整理すると、そのポジショニングの違いがより鮮明になる。
市場シェアの観点から業界トップランナーを比較すると、メーカーごとの設計思想の違いが浮き彫りになる。千葉県野田市を発祥とし、世界標準の調味料へと押し上げたキッコーマンは「濃口醤油」の圧倒的代表格だ。澄んだ赤褐色と華やかなエステル香、バランスの取れた旨味設計は、肉の油分を受け止め、加熱調理で食欲をそそる芳香を放つ。
一方、兵庫県たつの市で誕生し、関西の料亭文化とともに進化を遂げたのがヒガシマル醤油の「うすくちしょうゆ」である。ヒガシマルは揖保川の軟水と良質な米を活用し、素材の鮮やかな色彩を奪わない透明感のある出汁作りを追求してきた。両者の醤油は単純な優劣ではなく、「主役として香りとコクを主張させるか」「黒子に徹して出汁と素材の持ち味を引き立てるか」というアプローチの決定的な違いである。