鳥人間コンテストで事故が起きる背景には、機体の構造、パイロットの肉体的限界、琵琶湖特有の気象という3つの複合的要因が存在します。
第1に、機体の極限までの軽量化です。人力プロペラ機や滑空機は、滞空時間を伸ばすために骨組みを限界まで削り、フィルムを貼った極薄の翼を採用しています。そのため、想定外の横風や乱気流(サーマル)に遭遇すると、主翼がしなって耐荷重限界を超え、空中で主翼が折れる構造破壊を引き起こします。
第2に、パイロットの過酷な身体負荷です。数十キロに及ぶ長距離フライトを目指す場合、パイロットは狭小なコクピット内で全開のペダリングを強いられます。猛暑の琵琶湖上空では、脱水症状、熱中症、酸素欠乏による意識混濁が起きやすく、とっさの操縦判断が遅れて失速・墜落につながる危険性を常に孕んでいます。
第3に、着水時の脱出リスクです。機体が水没した際、パイロットがコクピット内のワイヤーや破断したフレームに絡まり、自力脱出できず溺水する危険性があります。過去の事故検証でも、着水直後の数秒間における救助スピードが生死を分けるポイントとして挙げられています。