市販飲料の原材料名ラベルを確認すると、上位に必ずと言っていいほど記載されているのが「異性化液糖(果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖)」です。トウモロコシなどのでんぷんを酵素処理して人工的に作られるこの糖液は、安価で冷水に溶けやすく、強い甘みを感じるため、清涼飲料業界にとって不可欠な素材となっています。
しかし、果糖ぶどう糖液糖の危険性は通常の砂糖(ショ糖)を凌駕します。果糖(フルクトース)は、ブドウ糖のように全身の細胞でエネルギーとして利用されることがほとんどできず、その代謝の約80%以上が肝臓に集中します。肝臓に過剰な果糖が一気になだれ込むと、肝細胞内で急速に脂質合成が進み、中性脂肪として蓄積されます。これがアルコールを一滴も飲まない人でも発症する「非アルコール性脂肪性肝疾患(現MASLD:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」です。脂肪肝と清涼飲料水の密接な因果関係は、国内外の肝臓学会でも強く警鐘が鳴らされています。
さらに深刻な急性病態が、救急医療の現場で頻発するペットボトル症候群(ソフトドリンク・ケトーシス)です。発症のメカニズムは実に陰湿です。
1. 暑さや喉の渇きから、果糖ぶどう糖液糖を含むジュースを一気飲みする。
2. 急激な高血糖状態に陥り、血液の浸透圧が上がって身体が脱水を感じる。
3. 脳が渇きを癒そうと指令を出し、手元にある同じ冷たいジュースをさらに飲む。
4. インスリンの分泌能力が限界を迎えて枯渇し、細胞が糖を利用できなくなる。
5. 代償として体脂肪が急激に分解され、酸性物質である「ケトン体」が血液中に溢れ出す。
この結果、著しい倦怠感、悪心、意識混濁を招き、緊急搬送されて集中治療室へ直行するケースが後を絶ちません。これは基礎疾患のない若年層であっても、数週間〜1ヶ月程度の清涼飲料水過剰摂取で突然発症します。糖尿病とジュースの関係は、緩慢に進行する慢性疾患の領域を超え、命を脅かす急性疾患としても隣り合わせにあるのです。