少年漫画誌の金字塔である『週刊少年ジャンプ』において、女性作家がメガヒットを生み出すことは決して珍しい現象ではありません。
歴史を振り返れば、『D.Gray-man』の星野桂氏、『家庭教師ヒットマンREBORN!』の天野明氏、『約束のネバーランド』で作画を担当した出水ぽすか氏など、少年誌の第一線で時代を築いたトップランナーたちの中に女性作家が多数存在します。また、他誌に目を向けても『鋼の錬金術師』の荒川弘氏(月刊少年ガンガン)や『犬夜叉』の高橋留美子氏(週刊少年サンデー)など、枚挙にいとまがありません。
それにもかかわらず、なぜ多くの少年誌作家は男性風、あるいは中性的なペンネームを用い、自らの性別を前面に出さない道を選ぶのでしょうか。
出版関係者への取材によると、その背景には読者心理に対する配慮があります。「少年漫画は男性作家が描くもの」「少女漫画は女性作家が描くもの」という旧来のステレオタイプなバイアスが読者の無意識下に存在していた時代、作家の性別が先立つことで作品世界の没入感が削がれることを避けるため、意図的に性別を曖昧にする慣習が生まれました。
時代が下るにつれジェンダーの垣根は消失しつつありますが、現在では逆に「作家の個人属性(性別・年齢・容姿)がSNS上で消費されるリスクから身を守る」という危機管理の観点から、性別非公開を選ぶクリエイターがスタンダードになりつつあります。