メンタルヘルスをタブー視しない潮流は、ハリウッドや海外エンタメ界の動きが先駆けとなった。その象徴とも言える存在がセレナ・ゴメスだ。幼少期からディズニー・チャンネルのスターとして育ち、世界的ポップアイコンとなった彼女は、不安障害、うつ病、そして双極性障害との過酷な戦いを包み隠さず語ってきた。
Apple TV+で配信されたメンタルヘルス・ドキュメンタリー『セレナ・ゴメス:My Mind & Me』では、華やかなツアーの裏で崩壊寸前の精神状態に苦しむ彼女の生々しい姿が映し出されている。彼女は自らの脆弱性を晒すことで、「不完全な自分であっても価値がある」というメッセージを世界中の若者たちに届けた。この作品は、単なるセレブリティの追悼録ではなく、現代社会が抱えるメンタル危機の縮図として高い評価を受けた。
日本国内に目を向ければ、Netflixなど各種配信プラットフォームでも再評価されている映画『ツレがうつになりまして。』のように、心の病を夫婦や家族の日常として温かく描いた作品が、長年にわたり人々の偏見を解きほぐしてきた。特別な誰かの異常事態ではなく、誰の身にも起こりうる人生の雨宿り。映像表現が果たす役割は、病名に対する恐怖を和らげ、受診のハードルを下げる上で計り知れない影響力を持っている。