希代のエンターテイナー・斎藤恭央さんの表現者としての歩みは、決して平坦なものではありませんでした。日本大学経済学部に在学中の1999年、お笑いコンビ「あばれヌンチャク」を結成。相方は後に声優としても高い評価を受けることとなる竹内幸輔さんでした。ボケの斎藤さんが繰り出す奇想天外な絵描き歌に、竹内さんが鋭く突っ込むスタイルで注目を集め、若手芸人の登竜門的ネタ番組に出演を重ねましたが、方向性の違いなどから2005年に惜しまれつつコンビを解散します。
その後、ピン芸人として生み出したキャラクターが、竹刀を持った赤いセーラー服姿の不良少女「スケバン恐子」でした。2000年代中盤の日本テレビ系『エンタの神様』に出演するや否や、スケッチブックを用いた観客参加型の辛口ツッコミネタで大ブレイクを果たします。決め台詞の「がっかりだよ!」は流行語となり、最高視聴率20%を超えるゴールデン枠の看板芸人として頂点を極めました。
しかし、本人は単なる一発屋で終わることを断固として拒んでいました。持ち前の端正なルックスと演技力を活かし、アニメ『満月をさがして』のタクト・キラ役など声優としても活躍。そして2010年以降、自らの新たな可能性を賭けて全身全霊を注いだのが、全員が男性でありながら女性のビジュアルで演奏を行うロックバンド「美女♂men」(美女♂men Z)の結成でした。
自らがプロデューサー兼ヴォーカルを務め、大手芸能事務所に頼り切るのではなく、インディーズ形式で全国のショッピングモールやライブハウスを地道に回る過酷なプロモーション活動を選択。移動車となるワンボックスカーの運転もスタッフやメンバー自らで交代しながら行うという、泥臭くも真摯なDIY精神で全国を疾走していました。事故はその熊本公演へ向かう道中で起きたものであり、夢の実現に向けて泥にまみれて奮闘していた最中の無念の幕切れでした。