この物語は、直木賞作家である野坂昭如の自叙伝的小説が原作となっている。野坂自身、戦中・戦後の混乱期に妹を亡くしており、その記憶と痛切な悔恨が執筆の原動力となった。彼が終生抱え続けた「自分が生き残るために妹の食べ物を奪ってしまったのではないか」という罪悪感が、作中の兄妹のドラマに深く反映されている。
実在した妹の面影は、作中における節子の愛らしさと儚さの中に鮮烈に刻み込まれている。野坂は生前、「自分は清太ほど優しい兄ではなかった」と語り、自らの愚かさや身勝手さを投影することで作品を完成させた。フィクションと過酷な現実が交差する点に、本作の持つ途方もないリアリティと哀愁の根源が存在する。