SNSや育児コミュニティでは、股関節脱臼に関する過度な恐怖や誤った自己判断が散見されます。臨床現場の実態に基づき、代表的な2つの誤解を正します。
誤解①:「しわが左右非対称なら必ず脱臼している」という思い込み
検診現場で精密検査を勧められた保護者の多くが絶望的な気持ちに陥りますが、前述の通り、太もものしわの非対称性単独での陽性的中率は決して高くありません。エコー検査を行えば、関節包の緩みや骨頭のズレがなく、単なる皮下脂肪の左右差であるケースが大半を占めます。「しわのズレ=脱臼確定」ではなく、「念のための画像検査を受けるスクリーニング基準」と捉えるのが正確な認識です。
誤解②:「歩き始めるまで様子を見ても大丈夫」という先送り
「痛がっていないから大丈夫」「ハイハイしているから問題ない」と受診を先延ばしにするのは極めて危険です。乳児期の股関節脱臼は痛みを伴いません。歩行を開始してから「歩き方が左右に揺れる(跛行)」「片足を引きずる」といった症状で気付いた場合、骨の変形が進んでおり、後述の装具治療が適用できず大規模な観血的手術が必要になるリスクが高まります。