海の怪異を語る上で避けて通れない歴史的記録が存在する。1734年、デンマークの宣教師ハンス・エゲデがグリーンランド沖で目撃した怪獣の手記だ。「頭部は船のメインマストよりも高く持ち上がり、体首はクジラのように太く、皮膚はシワだらけで、胴体はヘビのように長かった」――敬虔な聖職者が残したあまりに克明な描写は、シーサーペントを神話の領域から現実の報告書へと引きずり出した。
19世紀に入ると、イギリス海軍の軍艦「デダラス号」の乗組員全員が南大西洋で目撃した事例など、規律ある軍人による集団目撃が相次ぐ。視界の歪みや波の見間違いとして片付けるには、あまりにも具体的で一致した証言が多すぎた。海の男たちが見つめたその巨体は、単なる恐怖心の産物だったのだろうか。