ガタゴトと心地よい揺れとともに運ばれてくるのは、沿線の旬を凝縮したフレンチのコース料理だ。運行開始から月日が流れた今も、観光列車ブームの先駆けとなった「おれんじ食堂」は、2026年現在も高い人気を誇る。車窓を流れるのは、天草諸島を遠くに望む不知火海と東シナ海の水平線。地元の農家や漁師から毎朝届く新鮮な食材が、シェフの手で鮮やかに仕立て上げられていく。
「乗ること自体が目的になる列車を作りたかった」。運行本数を敢えて絞り、最長で3時間以上かけてじっくりと走る。途中の駅では地元住民による特産品の出迎えが行われ、乗客と地域の温かな交流が生まれる。効率至上主義のダイヤ改定が相次ぐ現代において、このゆったりとした時間こそが唯一無二の価値になっているのだ。