多くの夏歌が「青い海」「ひと夏の恋」「甘いロマンス」を爽やかに歌い上げるなか、『夏が来る』の切り口は異色を放っていました。主人公は、周囲の結婚ラッシュに取り残されつつも、お見合いや打算的な妥協を拒絶し、情熱的な本物の愛を追い求める自立した女性です。
「近頃まわりが騒がしい 結婚するとか子供産むとか」という衝撃的な導入から始まり、料理や家事を磨いて男受けを狙う世渡り上手な同性への冷ややかな視線と、そう器用には生きられない自分へのやるせなさが交錯します。ただの愚痴ではなく、「それでも私は私のままで幸せを掴みたい」という切実な願いと気高さが、聴く者の胸を締め付けます。
1990年代初頭のバブル崩壊直後、女性の社会進出と従来のジェンダー観の間で引き裂かれていた当時の世相はもちろんのこと、多様な生き方が選べるようになった2026年現在のリスナーにも「周囲と自分を比べて焦る孤独」は全く色褪せずに突き刺さります。