佐藤愛子の文学的キャリアにおいて、ひとつの到達点と評されるのが長編小説『血脈』だ。父である直木賞作家・佐藤紅緑、異母兄のサトウハチロー、そして自身を取り巻く夫たちや親族の破天荒な生き様を、一切の妥協なく描き出した大作である。
『血脈』に刻まれているのは、単なる家族の歴史ではない。狂気と才能、愛と憎しみが複雑に絡み合う「佐藤家」の血の呪縛と、それに翻弄される男と女の生々しい姿だ。元夫たちとの関係もまた、この壮絶な一族のドラマの中に必然として組み込まれていた。悲劇を悲劇のまま終わらせず、客観的かつ痛快な文章で描き切ることで、彼女は家族や夫たちとの因縁に決着をつけたのである。