松壱家に対するネガティブな言説を精査すると、そこには単なる味の良し悪しにとどまらない、ラーメン文化特有の文脈と消費者の心理が色濃く影を落としています。ネット上で「まずい」と評される背景には、大きく分けて3つの要因が存在します。
第1の要因は、「直系原理主義」との衝突です。家系ラーメンの元祖である吉村家に連なる「直系店」は、ガツンと効いた醤油ダレ(カエシ)の塩気と、スモーキーな燻製チャーシュー、鶏油の香りが前面に出る荒々しいスタイルを特徴とします。対して松壱家は、壱六家をルーツに持つ「壱系」の流れを汲み、豚骨と鶏ガラを徹底的に炊き込んで乳化させた、ポタージュのように甘くまろやかな白濁スープが持ち味です。直系特有の醤油のキレや塩分パンチを求めて入店した層にとって、このマイルドでクリーミーな味わいは「家系らしくない」「甘ったるい」と映り、それがネガティブな口コミへと変換されてしまうのです。
第2の要因は、スープの濃度と油分に対する耐性の違いにあります。松壱家のスープは骨の髄まで溶かし込んだ濃厚白湯であり、一般的なラーメンと比較しても脂質とコラーゲン質が極めて豊富です。体調や年齢、あるいは脂っこい耐性がない状態ですべて「普通」で注文すると、後半に胃もたれや飽きを感じてしまうケースが見受けられます。
第3の要因は、チェーン展開に伴う「工場系」への先入観です。松壱家を展開するウルトラフーズは、独自の高品質な冷凍スープ供給システムやFCノウハウを確立しており、安定した品質の全国供給を実現しています。しかし、一部のラーメン愛好家の間には「店内で寸胴をかき混ぜて仕込まないラーメンは本物ではない」という強いバイアスが存在し、実際の味覚検証を経ずに「量産型だからまずい」と決めつける風潮を生んでいます。