なぜ『相棒』に出演するゲスト女優は、他作品以上に際立った引力を放つのでしょうか。その舞台裏には、主演・水谷豊の撮影現場における哲学と、東映東京撮影所が長年守り続けてきた制作体制があります。
当時の特番インタビューや共演者の手記によると、水谷はゲスト俳優が現場に入った際、自ら歩み寄って温かく迎え入れ、完全にリラックスした状態を作り出すことで知られています。「右京という特異なキャラクターに対して、遠慮せず全力でぶつかってきてほしい」というスタンスを徹底しているため、ゲスト側も予定調和を打ち破るアドリブや感情の爆発を恐れずに提示できるのです。
現場をよく知るドラマ関係者は次のように証言しています。
「相棒の現場は長回し(ワンカットの長時間の芝居)が多く、カット割りでごまかすことができません。特に取調室のシーンは、10ページ近い台詞の応酬をほぼノンストップで撮ることもあります。水谷さんの澱みない台詞回しに対峙した女優さんは、全員が極限の緊張感に包まれます。その極限状態からこぼれ落ちる『本物の涙』や『引きつった笑み』こそが、名シーンを生むのです」
ネットの掲示板やSNS上の名演技ランキングでも、上位に挙がるのは決まって「取調室での右京との対決シーン」です。感情をむき出しにして自供に至るまでの数分間、女優たちの表情の変化は一種のドキュメンタリーのような迫真性を持っています。